大どんでん返し好き界隈では、よく名前が挙がっていたドイツ映画『ピエロがお前を嘲笑う』。
NetflixCEOのリード・ハスティングスも雑誌のインタビューで
「Netflixではこんな感じの構想を常に探している。本当に素晴らしいストーリーだ」と絶賛したという本作。
はてさて、どんなどんでん返しが待ち受けているのでしょうか!!?
あらすじ
学生時代からうだつが上がらないうえに、生い立ちが不幸なこともあり、自分自身を透明人間だと感じているベンジャミン(トム・シリング)。
14歳のときにコンピューターにハマり、人知れず天才ハッカーとしてダークネットで昼夜を過ごしていた。
ひょんなことで警察のお世話になり50日間の奉仕活動をしていたさなか、人生を変えるマックスと出会う。
ベンヤミンがマシン語を使えるハッカーと知ったマックスが、自身の仲間と組まないか?と誘ってきたのだ。
その誘いをきっかけに、ベンヤミンはマックスたちとハッカー集団クレイを結成。
ダークネット界の大物MRXに認められるべく数々のイタズラを仕掛ける。
クレイを絶賛する声がSNSやネットを駆け巡ぐり始める。
しかし上には上がいた。
欧州中央銀行のサーバを攻撃した「フレンズ」というロシアのハッカー犯罪集団がおり、ダークネット界隈ではクレイなど大物ではないとあざ笑われていたのだ。
憧れていたMRXにも笑われたマックスは激怒。
認めてもらうため、大きなハックを計画する…
ネタバレ考察
ベンヤミンは多重人格ではありません
そう、そうなんですよね。
結局ベンヤミンは多重人格ではありませし、マックス、シュテイン、パウロは存在しています。
もちろんリタリンの常用による発症と、母親からの遺伝の可能性はありますが、実行したときは多重人格ではなかったです。
映画では、一旦ベンヤミンが多重人格で全ての犯罪行為は一人で行われいると思わせておいて、やっぱり皆いたんだよっていうオチ…斬新です!!
多重人格で一回オチと見せかけてからの、さらにもう一捻りという仕掛けです。
temitaが大好きな映画『ユージュアル・サスペクツ』は最後の2分間を味わうための映画でしたが、この映画はラスト3分間に最後の一捻りが準備されておりました。
まったく、韓国映画『パズル』とは大違いだぜ…
たしかポスターに「100%見破れない」と書かれていますが、今回は実に分かりやすい伏線がありましたよ!
3つの薬きょう、4つの角砂糖
伏線ポイントの1つ目はこれ。
薬きょうはベンヤミンの曽祖父の戦友が、第2次世界大戦での曽祖父の形見として持って帰ってきたものです。
曽祖父は遺体すら帰ってきていないこともポイント。
映画冒頭でベンヤミンがホテルの部屋に入ると、遺体が転がっており、その近くに落ちていた薬きょうを拾い上げます。
やけに印象的に残る冒頭の薬きょうシーンだなと思っていたら、やはり薬きょうは後で大きな役割を果たします。
2つ目は4つの角砂糖。
4つの角砂糖はハンナからの取り調べで、ベンヤミンが手品を見せるときに出てきます。手の中の4つの角砂糖が、1つになったり。また4つに戻ったり。
これはクレイメンバーが4人であることがミソで、ベンヤミンの多重人格を暗示する要素になっております。
クレイメンバーが4人(角砂糖4つ)
→実は多重人格(角砂糖1つ)
→多重人格はウソでメンバーは実在する(角砂糖4つ)
という暗示。
ベンヤミンはハンナから解放される時、ハンナの車のダッシュボードに角砂糖を4つ置いていきます。
クレイ4人はベンヤミンの人格ではなく、実際に存在していることを表しているワケですね。
ハンナにベンヤミンの多重人格説を強く裏付けるとともに、ハンナがベンヤミンのトリックを見破るきっかけにもなります。
さぶとん1枚。
細やかだけど、確かに主張しているネタバレ
ベンジャミンの家に入り部屋を歩き回っているときに、じつはネタバレをしています。
それは壁に映画『ファイト・クラブ』のポスターが掛かっていること。
とても丁寧なネタバレです。
『ファイト・クラブ』のポスターは、観客のとても目のつきやすい位置に貼られているのでこちらでトリックに気づかれた方もいたのでは!?
(ポスターには気づいたけど、多重人格まで紐付けられなかった!!悔しい)
人は騙されやすく、争いを避けたがる
マックスがベンヤミンをチームの一員にするために、とあるデモンストレーションをみせます。
ドーナッツやさんのくだりです。
近くのゴミ箱からすでに誰かが捨てたドーナツ屋の空き箱とレシートを取ってきます。それを手に店に入り、すぐに済むからとレジに割り込むマックスとベンヤミン。
店員に「チョコドーナッツが2つ足りなかったんだが?」とクレーム。どの店員だった?と聞かれ、奥の女性店員をさします。
あの店員を呼んでくれというも、対応している店員は近くにあったチョコドーナッツ2個をしぶしぶ手渡します。
わざわざこのやり取りをベンヤミンに見せて、「人は騙されやすく、争いを避けたがる」。この2つを利用し、欲しい物を手に入れるデモを目の前で証明してみせます。
このくだりは、後のハンナの心理を理解するヒントになります。
証人保護プログラムはベンヤミンが精神疾患患者であるため適用できないはず。
ですがハンナは素直なベンヤミンに折れ、彼自身をサーバ室へいれ証人保護プログラムを書き換えさます。
そして彼を逃走させることにより、ハンナは自身の組織と争うことなく、ベンヤミンの目的を達成させることができたというワケです。
ざぶとん2枚。
原作が”Who am I”なワケ
個人的にはタイトルはオリジナル通り、”Who am I”であったほうが良かったと思います。というか”Who am I”だからこそ、このオチが完結すると思っています。
多重人格で我を失っていたと思わせて、実はそんなことはなく、証人保護プログラムにより出生証明書も新たな名前になって、透明人間が何者かになったワケですから。
見終わった観客は何度も映画を思い出し、最後に「そうか!だからタイトル”Who am I”なんだ!」とはっとしてやっとオチる。監督ニヤリみたいな感じですかね?w
(寝る前にはっと気づいたのは私です)
でも『ピエロがお前を嘲笑う』という邦題のほうがインパクトはありますし、ハッカー集団クレイにまんまと騙されたことには変わりないですねw
ということで。
大どんでん返し好き界隈のお気に映画『ピエロがお前を嘲笑う』の感想を書いてみました。
上映時間も100分あまりと、とてもコンパクトな中にぎゅぎゅぎゅっとトリックや伏線を詰め込んだびっくり箱のような作品となっております。
様々な伏線を拾っていくなかで、temita的にマリの存在がどうもしっくりこないんですよね。
だってピザ配達しに来た人に、「法律問題を盗んできてくれたら、もう100ユーロあげるわ」って言います!?
「サーバにあるわ」って言います!?
マリって実はマックス達と最初からグルだったりしないんですかね?
と完全に消化不良ですが、ここで終わりにしますーー
ではでは