なぜ映画のポスターが、兄にフォーカスされているのか。
鑑賞前このポスターに違和感を感じていました。
なぜなら突然目の前で拉致され帰ってきた兄に対して、
弟が違和感を感じるところから始まる映画なので、弟のカン・ハヌルにスポットが当たるはず…
今ならこのポスターの意味がよーーくわかります。
【あらすじ】
大雨の中、突然弟ジンソクの目の前で大好きな兄(キム・ムヨル)が誘拐される。
19日後に帰宅した兄は、その間の記憶が全く無かった。
それだけではない。兄の様子何かがおかしいと気づく弟ジンソク(カン・ハヌル)だが家族は取り合ってくれない。
ジンソクの不信感は日に日に増すばかり。
その裏で「家族の秘密」がす少しづつほころび始める・・・
ネタバレ結末
事件のはじまり
1997年5月。
土砂降りの中、ある男が就寝後のとある一軒家に忍び込みます。理由は兄の治療費を得るために、交換条件で殺人を依頼されたから。
依頼した男は、母親だけを殺害することを強く望みます。何度も子供2人には指一本触れるなと念押しをします。
この殺害を依頼された男こそ、弟ジンソクでした。
弟ジンソクは人を殺めている
弟ジンソクは、とある一家の母娘2人を殺めています。
その事件は当時在宅中の母娘を鋭利な刃物で刺殺した、一家惨殺事件としてセンセーショナルに報道されます。
しかし事件当時は土砂降りだったこともあり、結局犯人は時効を超えてなお、捕まりませんでした。
だけどやはり遺族は諦められなかった。
遺族は独自に探偵事務所に依頼し、真犯人である弟ジンソクを捕らえます。
復讐心にもえる遺族でしたが、弟ジンソクはその当時かなりのショック状態にあり、事件のことは全く覚えておらず…
そこで全ての真相を思い出させるべく、睡眠術で暗示をかけ弟ジンソクを事件が起こる幸せな時期に記憶をもどすために、偽家族を演じることになったわけです。
催眠術師をかける精神科医は父親役、母親役はが贔屓にしていた女性に依頼。
そして犯人ジンソクの兄役は、事件唯一の遺族である息子が務めるというスリリングな展開に。
結局この偽家族作戦は機能せず。しかし犯人ジンソクは、なんと交通事故のショックですべてを思い出すことになります…
実兄の長期入院や手術のきっかけとなった事故で、両親を失ったこと。
実兄の治療費のため、高卒で働き口を探したが韓国IMF危機の影響でまともな仕事がなく日々つらい思いをしたこと。
そのために殺人を引き受けてしまったこと。
そして侵入がバレてしまい、突発的に母娘を刺してしまったことを。
韓国IMF危機の衝撃
この悲劇のきっかけの一つは、1997年の韓国IMF危機です。
この危機はホントに韓国国民の生活や意識を大きく変えた出来事なんだなと、その影響力を感じずにはいられません。
あらゆる映画で危機自体が描かれたり、この映画のように望まぬ選択をしなければいけなかった理由として描かれてます。
その影響は今を生きる若い世代にも、「小さい頃の記憶」として残っているようです。
temitaが昔好きだったアイドルの一人は、小学生だったころこの危機に巻き込まれ、住む家がないために家族とともに同級生宅へ居候していたそう。
その同級生は普段居候のことは、何ひとつ気にしない様子だったため、アイドル本人も普段負い目に感じたことはなかったそうです。
ところがある日、その同級生とケンカになり「うちに住んでるくせに!(そのくらい貧しいくせに)」と言われ深く傷ついたと語っていたことがあります。
まさか同じ現代を生きる20代の小学生時代に、フツーの人々が経済危機に巻き込まれていたなんて。
とても衝撃的なエピソードです。
衝撃の結末
偽家族の真相を知った弟ジンソクは、偽兄の車から飛び降り、交通事故に巻き込まれ意識を失い病院へ運ばれます。
弟ジンソクは病院のベットで偽兄に「思い出したんだろ?」「事件の依頼者は母親の夫だろ?事件の一ヶ月前に妻に死亡保険金が掛けられていた」と迫られます。
そこでなんと事件現場で唯一生き残った息子は、偽兄自身であることが明かされます!
俺が遺族だから全てを話せというわけですね。
偽兄は事件の首謀者は自分の父親なのでは?とずっと思いを募らせていたんです。
しかし弟ジンソクは、首を横にふりそれを否定します。
ですが偽兄は父親が殺害を依頼したことを、悟ってしまいます。
そしてジンソクの罪を許し、生きることも許したように思います。最後のセリフが「達者でな(チャル サラ)」でした。
実は弟ジンソクもある悲劇を思い出します。
首謀者の父親は、自身の兄・両親の主治医だったことです。
殺害後家を立ち去るときに、家族写真を目にし、電話の声が主治医であることに気付きます。
そしてその主治医のことも、問い詰めた際に誤って転落しそうになるところを救えなかったことも思い出すのです。
結局2人は「自死」を選択します。
最愛の兄を救うどころか、罪のない主治医一家の母娘と主治医を殺害してしまったジンソクは近くにあった薬物を自らに投与。
唯一生き残ったものの、財産目当ての親族にタカられ施設に預けられ、長年自分の父親が主犯では?と苦しんだ偽兄。
彼は行き止まりの院内の廊下の窓より、身を投げ事切れてしまいます。
(まるで彼自身の人生を描いているよう…)
くしくも、ジンソクは最愛の兄と、偽兄は父親の最後の姿と同じ姿で最後を迎えるのでした。
伏線ポイント
今回気づいたのが2つ。
ジンソクの家族が引っ越し作業をおこなっていた時、作業員の一人が弟ジンソクに対し
「あの人は本当にヒョン(兄)なの?お兄さんはいくつなの?」と質問をしてきます。
観ている方は「この作業員、なにがそんなにひっかかるの?」と一瞬心に浮かぶのですが、
この作業員は兄に呼ばれ答えを聞くことなくこの場を離れることに。
これが一つ目の伏線。
2つ目は非常に分かりにくいのですが、引っ越してきた際に兄が部屋にカレンダーを掛けるのですが、この日付が1997年5月。
(一家惨殺事件が起こったのが12月。IMF危機が起こったのが11月TT)
ということで。
内容はヘビーでしたが、今回も思考があっちへこっちへ行ったりと振り回され、とてもスリリングでした。
事件の真相や背景はかなりリアリティを感じましたが、
実は催眠で暗示を掛けていて21歳だと思っているジンソクが、じつは41歳だったよというのは少し無理があるかな?と思うような思わないような…
真相がわかると、観客の視点もそれに変わるのですが・・・
「えぇぇぇぇー。ちょっとハヌル厳しくない?」と現実に少し引き戻されてしまいました。
(ごめんハヌル。ハヌルは悪くないのだ!w)
それまでは結構いい出来だったと思うw
↓真相はこちらもヘビーだけど、まだ軽快なカン・ハヌルが観られます!
↓祝!シーズン2公開。Netflixドラマ『秘密の森』シーズン1をご紹介
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