「既婚者が突然筋トレをし始めたら、浮気をしているか、し始めたかのどちらかだ」という、捜査にたずさわった警官の一言。
この言葉がまんま当てはまることになるとは…
そしてその浮気がまさか、一家の命を奪うことになるとは
犯人をはじめ、誰しも夢にも思っていなかったはず。
あらすじ
アメリカのコロラド州に住むシャナン・ワット。夫クリスとの結婚を機に、2人の地元ノースカロライナ州から引っ越してきた。
2人のかわいい娘に恵まれ、クリスは良い仕事につき生活は順風満帆。
ある日、シャナンの仕事の研修がアリゾナであった。
帰りのフライトが遅れてしまい、夜中の2時に家に帰宅をする。
しかし翌日からシャナンは一切連絡が取れない状態になり、娘2人とともに行方不明になってしまう…
ネタバレ感想
犯人は夫
映画は行方不明の妻シャナンの友人の通報からスタートします。
しばらくすると夫クリスが家に帰宅し、警察の対応をするのですが
皆さんの予想通り、犯人は夫クリスです。
クリスは警察や友人たちと自身の家の中で、シャナンや子供たちがいないか探します。
その様子は終始落ち着いているように見えます。
ところが隣人宅で監視カメラ映像を観始めた時からクリスの様子が一変。
みるからにソワソワし始めるんです。
クリスの様子をみた隣人が「様子がおかしい。いつもは無口でおとなしい。あれだけ喋ってるのがおかしい」と警察に答えます。
じつはこの隣人のカンはビンゴ。
まさかクリスは妻シャナンの遺体を乗せようと車を家に寄せた映像が、残っているとは想像もしていなかったのでしょう…
なぜ殺されたのか?原因は浮気相手ニコル
これは夫クリスの浮気が原因です。
クリスは若く魅力的なニコルと出会います。
その時、妻とはうまく行っておらず離婚を考えていることや、娘2人がいることもニコルに伝えていますが、クリスとニコルの関係は始まってしまいます。
実はシャナンが殺害される前、娘2人をつれノースカロライナの実家に旅行へ行っています。
それも6週間とゆっくり時間をとり、シャナンは冷めかけていたクリスとの関係改善につなげようと考えていました。
しかしクリスは仕事で結局、最後の1週間しかノースカロライナ旅行に参加できなかったんですね。
ノースカロライナ旅行から帰宅したシャナンは、この離れ離れになった間であることを確信します。
それはクリスの浮気。
5週間も離れていたのに、シャナンに触れたのは出迎えのキス一回のみ。
シャナンがどれだけ求めても、そのたびに拒否されると友人へ相談をしますが
もはやクリスは浮気相手ニコルとの将来しか頭にありませんでした…
警察での事情聴取でクリスはウソ発見器に掛けられます。
明らかに嘘をついていると結果がでたため、捜査員はクリスに自白を求めます。
クリスは自身の父親を呼んでもらい、2人きりにしてもらうと
閉じ込めていた感情を少しづつ吐き出すかのように、
「シャナンをかばいたくない。彼女がやったんだ。それで彼女を殺すしかなった」と語り始めるのです。
「シャナンをかばいたくない」とはどういう意味なのでしょう??
クリスによると、娘2人の首を締めたのはシャナン。それで気が動転し、クリスはシャナンの首をしめたというのです。
ここで捜査員が加わり、クリスの証言を引き出してゆきます。
捜査員はクリスにシャナンと娘たちの居場所を尋ねます。
でもクリスはシャナンは埋めたと証言するのですが、娘2人のことは「(場所を教えたところで)帰ってこない」と頑なに教えようとしないのです。
この心理って非常に不思議ですよね。
頑なに教えようとしないのは、見つかるのが嫌だから?人の手に渡るのが嫌だから?
見つかっては困るから?なのでしょうか…
結局クリスは娘2人はクリス自身が殺害し、オイルタンクに捨てたと証言します。
(オイルタンクは妻シャナンを埋めた場所の目の前です)
この行動もまるで理解ができません。
なぜシャナンのように埋めずに、オイルタンク内に捨てるという考えられない放置の仕方をしたんでしょう??
母子を離して放置したのでしょう??
残念ながら映画でこの部分の解明は行われておりませんでした…
《以下殺害の様子を記載しております。ご注意ください》
後の裁判でクリスが明らかにした一家殺害の詳細はこうです。
夜、寝室にてクリスとシャナンは関係改善の話になった。
クリスがシャナンに対し「もう愛していない」と話すと
シャナンが「(つかんでいる手を)離して」と言った。
すると自分の意志ではなく、すでに初めから埋め込まれていたかのように彼女の首をしめていた。
すると長女ベラが寝室にやってきて、ベッドでうつ伏せになったシャナンをみて
「ママどうしたの?」と心配した。
クリスはシャナンの遺体をシーツに包み、自分の車に乗せた。
(家のガレージに寄せるように止まる車の様子が、隣人の監視カメラに写っている)
子供たちも車にのせ、勤務していた油田まで走らせる。
子供たちは「ママ大丈夫?」と気にしていたが、やがて2人ともウトウトし始め
車の床に寝かされていたシャナンと一緒に寝始めた。
油田につくと、次女のシシを毛布でおおい殺害。
長女ベラは「シシはどうしたの?」と異変に気づいたが、おなじくベラも殺害。
クリスは目を閉じるたびにベラの「パパやめて」の声が聞こえると証言しています…
夫が最後まで温厚な男性に見えた恐怖
ここまで活字で夫クリスの発言や行動を書いてきました。
おそらく映画をご覧になることなく、この記事をお読み頂いている方は
想像しずらいと思うのですが、クリスのあらゆる人に対する態度が非常に温厚なんです。
フツーに優しい感じの人なんです。
シャナンの友人、警察、隣人、自分の両親。
どんな関係の人間にも荒ぶる様子や、声を上げたり感情をぶつけることなどしないのです。
仕事の上司でさえ、彼が浮気をするようなことはない、そんなことは考えられないと発言。
全くの第三者として映画を観ているtemitaですら、家族を殺す犯人として想像できなかったです。
そこがむしろとても不気味なことろ。
とある捜査員が、新しい女性との生活を望むのならば、離婚すればよかっただけのことと指摘していましたが全くその通りです。
実はシャナンは、3人めの子を妊娠中だったんです。
クリスもそれは知っています。
(3人目妊娠発表の映像もFBに残っています)
それでいて一家を殺害するという残忍さと、クリスの印象のギャプがとても深く恐怖として刻みこまれます…
結局クリスは3回の終身刑という判決が下されています。
衝撃的なもうひとつの事実
記事の最後に、映画本編のラストに表記されていたアメリカのもうひとつの事実を。
アメリカでは毎日3人の女性が、現在または過去のパートナーに殺されている。
子供やパートナーを殺すのは、主に男性である。
このような犯罪は、ほほすべて計画的なものです。
ーNetflixオリジナル『アメリカン・マーダー: 一家殺害事件の実録』
上記は字幕そのままを記載しております。
けっして「対岸の火事」ではない事実ではないでしょうか。
ということで。
今回実録の映画を観てみましたが、驚くことにこの映画の映像はすべて
シャナン自身のFB、友人たちのメッセージのやりとり・写真、警察および隣人からの提供にて構成されております。
浮気相手の写真や、事情聴取の動画も使用されています。
個人のデバイスが発達した現在だからこそ、作成できた映画です。
そして何より愛する人々を失った遺族の方々、シャナンの友人たちの深い愛情と大きな勇気によってできた作品なのだと思います。
シャナン、ベラ、シシ、そしてシャナンのお腹の息子さんのご冥福を心よりお祈りします。
[おわり]
↓予習!同じくドキュメントな『事件現場から セシルホテル失踪事件』
↓こちらもNetflixで独占公開!あなたはこれをホラーと呼べますか?
https://temitakms.com/blymanorall/?=1367