この後味のわるさは、映画『ミスト』以来。
多くのレビューサイトで「ひさびさに爽快な映画をみた」と、
そのエンディングを絶賛する声をみかけた映画『ザ・ギフト』。
確かに、不気味な同級生ゴードの視点でみれば、爽快だし、みごとな展開かも。
でもなぜか、あっぱれと手放しでゴードに拍手をおくれないんです。
そこにはロビンがいるから。
ゴードに一言、「自分の復讐に、人を利用するなよ」。
【あらすじ】
転職を機にシカゴから、自身の地元L.Aへ引っ越してきたサイモン(ジェイソン・ベイトマン)とその妻ロビン(レベッカ・ホール)。
急いで家具を購入している際、サイモンの同級生だと、ゴードが声をかけてくる。
ゴードの顔をみても思い出すのに時間がかかったサイモンだが、
なんとかその場は無難な対応をし、店をはなれる。
翌日、玄関先にワインがカードとともに置かれていた。
送り主はゴード。
住所は教えてないはずなのに?と首をかしげる2人だったが、
その日いらいゴードから思いもよらないギフトが届くようになる・・・
これ以降、ネタバレな記事になります。
ご注意ください。
【感想】ネタバレあり!
自分の復讐に、人を利用するなよ
最初から、こんな感想でごめんなさいw
ゴードのしてやったりな復讐に、結構絶賛な記事が多かったのですが、
個人的に、このやり方は許せなかったです。
だって、ロビン関係ないじゃん!
正直子供がどちらの子供なんて、生まれた時点の目の色ではわかりません。
だって、ロビンの目の色、ダークブラウンじゃん!
そして西洋人の場合、成長過程で色が変わっていくのが通説。
今すぐ確認したところで、確実にわかるはずもありません。
時間がたてば「結果」がわかる
ではなぜ、ゴードは「目の色で確認したらどうだ」なんていったのか。
慌てて向かったサイモンに見せたかったのは、「息子の目の色」ではなく、
生まれたての息子と、それを愛おしく抱くロビン。
それらは完全にサイモンが失ったものたちです。
ガラス越しに、あらためて「失った愛おしいものたち」を、強く記憶にやきつけてやろうとしていたように感じます。
とても残酷ですが、どちらの子供かは、時間がたてばおのずとわかります。
それまでの長い時間が、サイモンにとっての「つぐない」になるというわけですね…
話のスポットライトが、ゴード➝ロビン➝サイモンと移りかわる
住所もしらないはずなのに、プレゼントを置いていく「ブキミな」ゴード。
映画の冒頭、まずは同じ高校にかよう同級生だった、
夫サイモンの回想によりゴードにスポットがあたります。
その内容から、サイモンからあまり良く思われていないのがわかります。
つぎにフューチャーされるのが、サイモンの妻ロビン。
サイモンの同僚たちとの会話や、ご近所さんとのやりとりで結婚後の暮らしがわかります。
毎朝日課であるランニングを欠かさないマメさ、そしてゴードのやさしさを受け止める素直さが描かれます。
が、何をきいてもラチがあかないサイモンに嫌気がさし、自分で動き出す芯の強さも発揮。
そしてこの行動力が、思わぬ真実をあぶり出す結果に。
最後は、夫サイモン。
このあたりから、観ている人はサイモンに違和感を感じはじめます。
あらゆる角度からサイモンに関わった人々のコトバ、
そして彼に不信感をつのらせたロビンの詮索により
ぼんやりと彼の真のすがたがみえはじめます。
そして気づきます。
あ。
これ1番みせたいのは、サイモンの人格なんだと。
しかし、観客が気づいたときにはすでに、ゴードの計画が終わりを迎えようとしていました。
忘れらないサムターン錠
ゴードからの最後の贈り物。
たくさん送られたなかで、びっくりしたのが合鍵。
鍵を差し込んで、クルッと回す、サムターン錠です。
日本でいちばん使用されているタイプの鍵なのですが…
え?豪邸なのにサムターン錠?
ホームセキュリティはいってないの?
サイモンの転職先がセキュリティシステム会社だというのに、
自分家は他人が出入りしていたよという皮肉をあらわす役割ですね。
地味に怖いw
【脚本の勝利】
主要キャスト3人。
しかも世界中だれもが納得する、普遍的な動機。
それをベースに物語を展開し、暴かれていく人間の残酷さと凶暴性。
脚本の完全勝利ですが、個人的には鑑賞後の「後味」に胃もたれしました。
なによりも、薬をもられ、体にふれられたロビンをおもうと
「爽快な復讐劇」とは思えないからです。
ただ映画自体は無駄な描写もなく、
俳優さんたちの簡単に読み取れない表情の演技も素晴らしかったです。
とくに、うまれた息子の目をみたサイモンのなんとも「判断しづらい」涙の表情。
忘れらないシーンです。
ゴード役のジョエル・エドガートンが脚本・主演・監督をつとめたという今作。
次回作が素直に楽しみです。
最後に。
人をおとしいれるのはダメ。
人を巻き込んでの復讐もダメ、ぜったいw