「連れてこられた半魚人?に恋をした」お話を描いた映画『シェイプ・オブ・ウォーター』。
ギレルモ・デル・トロ監督の最高傑作と呼び声の高い本作。
この突拍子のない設定についていけるのか、心配だったのですが、
ラストが気になって最後まで鑑賞しました。
さっそく感想をお届けします。
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【あらすじ】
国の機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンス)。
話すことができない障害と付き合いつつ、同僚のゼルダ(オクタバ・スペンサー)や隣室のリチャード(マイケル・シャノン)と助け合いながら一人暮らしを送っていた。
そんなイライザはある日勤め先に、見たことのない大きな水槽が運び込まれる現場に偶然遭遇。
気になり水槽を覗き込むと、そこには得体のしれない生物が収められていた。
その不思議な生き物に興味をもったイライザは、その日以来ランチをその生き物と過ごすことに日々の楽しみをおぼえる。
急速に距離が縮まるイライザと生き物。
なんとその生き物はコミュニケーションが取れ、音楽を楽しむ感情もあったのだ。
しかし清掃中、その生き物の扱いをめぐり施設上層部の意見が別れていることが判明。
どうやらその生き物は解剖の危機にあると知り、イライザはこの施設からの救出を考えるが…
【感想】
受け入れてもらえない悲しみ
この不思議な生き物。
見た目は完全に人間よりなので、初めて見た人たちも拒絶感が薄い生き物です。
生息していたアマゾンでも、原住民には「神」と崇められていたそうで
「人間」と「さかな」の見事な融合が目を引きます。
ただ悲しいかな。
「どちらでもある」ことは時に「どちらでもない」ことになってしまうわけです。
手話を覚えコミュニケーションとれても、音楽を楽しむことができても、
ゆで卵が食べられても(!)、この不思議な生き物は「人間」でもなく「さかな」でもない。
彼を捕獲したアメリカには、冷戦中のロシアに対抗する「武器」という扱いでしかないんです。
誰にでもある「孤独」
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そこに現れたイライザ。
彼女も「言葉は聞ける」が「言葉を話せない」状態というだけで、常に孤独を抱えていました。
孤独感を抱えていたのはイライザだけではありません。
隣室のリチャードは同性に恋をしていますが拒絶され、仕事への復帰も叶わず一人イラストを描き続けています。
同僚ゼルダは夫とまともな会話もなく、彼の食事の準備をし片付けるというまるで家政婦のような生活。
それぞれの孤独感は、観ている者に「自分のなかの孤独」を思い出させます…
皆、美しい創造物
そのなかでとても印象に残った言葉があります。
初めて不思議な生き物と対面したリチャードが発したこの言葉。
「なんと美しい創造物だ」です。
イライザは多くの時間を不思議な生き物と過ごすうちに、
彼を愛するようになるのですが、その理由を
「彼は私に何が足りないのか知らない。ありのままの自分を受け入れてくれている」と
リチャードに話します。
まさかここで、アナ雪がやってくるとは夢にも思っていませんでしたw
いえ、ふざけているのではありません汗
むしろあれだけ世界中で「アナ雪」旋風が巻きおこったにも関わらず、
それでもなお「ありのままの自分」を受け入れてもらえることが
難しい世界に私達は生きているのだと再度言われてしまったんですね…
なんと行きにくい世の中なんでしょうか…涙
納得のエンディング
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その生命を奪われるかもしれない、不思議な生き物。
彼に恋をしたイライザは彼を救出するために行動にでます。
詳しくは映画を楽しんで頂きたいので、詳細は書きませんが
(え?手抜きした?)
この2人の関係に答えがでます。
肺呼吸・エラ呼吸もできるが、その時間の多くを海ですごす不思議な生き物。
そして完全な肺呼吸のイライザ。
どうやってオチをつけるのかと思っていましたが、
まさかあれが伏線になるなんて。
ちょっとだけ、やられた!と悔しかったです。
アカデミー賞作品賞と取った、誰もが知る作品。
人間と異種の恋愛という、見る人を選んでしまう設定なので
最初から選びもしないという方も多いと思います。
個人的にも「半分魚」というのが、なかなか乗り気になれなかったのですが
その恋愛の合間に描かれる社会問題に考えさせられる作品でした。
作品中に多用される「翡翠色」に、多くの意味が込められているはずなのですが
残念ながらtemitaにはわからずじまいでした…
対象的に赤はイライザの色。
愛情の色でしたね。
(ポスター参照。靴が片足だけ外れているのに注目)
だいぶおとぎ話色の強い本作。
観る方を選ぶとは思いますが、恋愛における「どうしようもなく惹かれる心」や
ともに思いが通じ合った時のなんとも言えない至福感の描き方は一見の価値ありです。
タイトルの意味をもう一度考えたい、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』でした。