嘘をつくとすぐに吐き出したり。
面白いものが見られると思うと、いても立ってもいられず早めに現場に駆けつけたり。
人間の行動は本当に正直です。
大豪邸、富を築き上げたミステリー作家の死、そして莫大な遺産相続…
まるでアガサ・クリスティーを彷彿とさせるミステリー。
いったい誰が犯人なのでしょうか?
以下ネタバレで書いております。映画を存分に楽しみたい方は鑑賞後にまた来てくださいね!
あらすじ
何冊ものベストセラーを生み出したミステリー作家ハーラン・スロービー(クリストファー・プラマー)。85才の誕生日パーティーの翌朝、首が切られ死んでいる姿で発見される。
警察は状況より早々と自殺と断定するが、私立探偵のブラワ(ダニエル・クレイグ)は他殺の可能性を探っていた。
なぜなら何者かがブラワに現金とハーラン死亡の新聞記事を送りつけてきたためだ。
ハーランと大豪邸に住むスロービー一家を事情聴取していくとそれぞれの事情が見えてきて…
ネタバレ解説
ハーランを殺したのは犯人は誰か
じつは直接的な犯人はいません。
真相は警察の初見通り、ハーランは自殺だったんです。
でも自殺願望があったわけではありません。
あの状況のなかでは、自殺に見せかけるしか選択肢がなかった
というのが正しい表現です。
ではなぜ、「あの状況」になってしまったのか?
じつはこの映画はココがお楽しみです。この悲劇をつくった輩がいるわけです。
それはハーランの孫で問題児のランサム(クリス・エヴァンス)です。
動機は単純明快。
パーティーの合間に自分が遺産相続人から外されたことをハーランから直接聞かされたランサム。
しかも全財産を全くの他人であるマルタに譲るというではないですか。
この事実を知ったランサムは、マルタにハーランを殺害した張本人として「相続欠格」に陥れ、マルタの相続を阻止しようとしたわけです…
しれっとしたイケメン顔で!
(あの素敵な厚い肩にダマサれるとこでした!ふぅー危ない危ない…)
ハーランの殺害方法や、マルタへの罪のなすりつけ方法を
思いつくだけの能力を他に生かせば問題児にならず、相続できたかもしれいないのに。
しかしハーランは、さすがミステリー作家ですね。
自分の命が後10分もない中で、新たな殺害方法のネタとしてメモしたり
マルタの状況を考慮し、マルタへの疑いを背ける筋書きと具体的な方法を編みだすわけですから。
(ハーランはココロも顔もイケメンですな!孫とは大違い)
マルタの弱み。不法移民。
じつはマルタの母親は不法移民。
地元ではあのミステリー作家が亡くなり、莫大な遺産がマルタに渡るということで
ニュースは連日大盛りあがり。
事件をきっかけにそのことが公になると、母親は強制出国になりマルタとは離れ離れになってしまいます。
スロービー一家は真面目で献身的なマルタを家族のようにおもっていると口にするんですが、
いざ遺産がマルタのみに行くとなると「不法移民」を振りかざしマルタに牙をむきます。
この要素は映画のタイトル”Kives Out”を表しているだけではなく、今のアメリカの問題を映し出しています。
スロービー一家がお酒を楽しんでいる席で、「アメリカは誰のものか」で議論になります。
リンダの夫リチャードは「アメリカはアメリカ人のものだ」と語気を強め発言。
その姿はドナルド・トランプの”Make America Great Again”を彷彿とさせます。
インフルエンサーやネオナチ、大学費用に困窮している大学生、そして強靭なアメリカを信じる保守派。
豪邸のリビングで寛いでいるスロービー一家はまるで今のアメリカの縮図のようです。
ちなみに”Knives Out”とは、
人々が誰かの経歴や評判を損なおうとすること。
誰かが行ったことが不正や不公平であると感じて、その誰かに反感を持ち、批判したり罰したりしようとする状況に使われます。
複数形が使われていることからもわかるように、複数の人々やグループの行為を指しており、人々の批判の矛先が ・・・に (・・・ for ) 向けられている、 という意味になります。
参考URL:英会話スクールIHCWAYより
“The knives are out.”(=矛先が向けられる、攻められる)から来ているようです。
まったくマルタの状況そのものです…
伏線ポイント
- 嘘をつくとすぐに吐き出すマルタ
- 外からの問いかけに反応が鈍いグレート・ナナ(ハーランの母)の発言
- 「本物と偽物の見分けがつかない」ハーランの発言
- オープニングの”My house My rules My Coffee”のマグ
マルタ役のアナ・デ・アルマスの驚くべき真実
さて。
正直にいうとダニエル・クレイグが主人公ですが、見終わってみるとマルタとランサムの印象がとても強く残っています。
最後まではたしてマルタはいい子なのか?
ランサムは信じられるヤツなのか?と心揺さぶられる一本でした。
好評のあまり続編と決まっているという本作。
往年のミステリファンなら心踊る設定・オマージュが盛りだくさんな上に、
展開のリズムもよくあっと言う間の130分でした。
なにより、マルタ役のアナ・デ・アルマスが32才(2020年時点)であることが
一番の驚きな映画『Knives Out/名探偵と刃の館の秘密』でした!