韓国では2008年にはじまった、国民が裁判に参加する国民参与裁判。
その記念すべき1回めの裁判で起こった事象を再構成した本作。
裁かれる者、裁く者、意見を求められる者。
そのどちらの立場にたったとしても、人の人生を変えるかもしれない「判決」を
自分は下すことができるのか?と時におかしく、時に真剣に問うたコメディー作品でした。
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【あらすじ】
防犯アラームを開発しているナム(パク・ヒョンシク)。
さらなる改良のための資金を募るべく、民事申請課に出向いていた。
なんとか申請が通りかけた矢先、ナムの携帯がなる。
電話の内容は、韓国初となる国民参与裁判の陪審員としての参加依頼だった。
参加してみると、すでに被告が有罪の証拠はあり、「有罪ありき」で裁判の道筋が整えられていた。
ところが裁判中、陪審員の一人が、監察医の「生前に金づちで殴られた」という証言に突然異議を唱える。
「この傷は金づちで殴られたものではない。何より室内に血しぶきがないじゃないか」という主張に、法廷内が騒然となる…
↓これから映画を観るけど、できればタダで観られないかな?という方へ
【感想】
流されない姿勢が大事
日本公開時のタイトルは、『8番目の男』(=ナムのこと)ですが、
韓国版タイトルは『陪審員たち』。
たしかに劇中のキーとなるのはナムですが、あらすじに書いたとおり
最初に波紋を投げかけたのはナムではなく、死体清掃者としてキャリア30年の男性。
その経験から、監察医の矛盾に気づき声をあげます。
ただし、陪審員は法廷内で発言することができません。
裁判長にその旨、注意をうけるのですが、臆することなく素直に疑問の声を上げ続ける男性。
ついには退場になってしまいますが、
この声をきっかけに裁判は思いもよらぬ方向に進みはじめます…
「よく分かりません」も大事
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全国民の注目を集めるこの裁判を成功させるべく、検察側や弁護士は有罪ありきで裁判を進めます。
それに上手くコントロールされる陪審員たち。
評決の投票を行うと皆が「有罪」と投票。
しかし、この裁判の鍵をにぎるナム氏がこの流れをぶった斬ります。
「無罪」と書いて投票するわけでもなく、なぜか白票を握りしめるナム氏。
「何を迷っているんだ」と問い詰める陪審員たちに
「よく分かりません」と一言。
(他の陪審員たちはさっさと帰りたい)
無罪であることも、有罪であることも、そのどちらにも確信がもてないと
素直な気持ちを吐露。
想像通り、他の陪審員一同をイライラマックスに導くのですが笑
これがこれまた、意外な真実を突き止めるのです…
事件の真相とは
ここで事件の内容を少しご説明。
時折雷がとどろくなか、雨が土砂降りの夜。
比較的貧困層が多く住む団地の9階から、その部屋に住む年老いた母親がベランダより転落死。
たまたまその向かい側の棟を歩いていた警備員が、現場を目撃していました。
証言によると、死亡した母親が転落した際、同居する息子がその現場にいたとのこと。
その後息子は自身で、救急を要請する電話を入れていますが、
「母親を金づちで殴った後、ベランダから転落させた犯人」として捕まります。
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物的証拠も揃う上、検察庁のメンツがかかった裁判。
そして息子が障害をおっており生活費に困り、市政とケンカしていた状況も追い打ちをかけ
非常に形勢は不利な状況。
ですが、ナム氏たち陪審員たちの「違和感」が事件の意外な真相に大きく迫ります。
その「真相」はぜひ、映画で確かめてください!
日本の裁判員裁判と何が違う?
少し気なるので、調べて見るとこんな記事が。
殺人や強盗などの重大犯罪を巡る刑事裁判の一審が対象▽裁判に参加する人が国民から無作為で選ばれる――といった点は日本の裁判員制度と似ている。
一方、評議は陪審員だけで始めるが、全員一致にならなかったら裁判官が加わる
▽評決は陪審員だけで出し、裁判官はその評決と違う判決を言い渡すことができる
――など、流れはかなり異なる。被告が、国民参与裁判か、裁判官だけによる裁判かを選択できるのも日本の裁判員制度と違う点だ。
ー韓国「市民が参加」間近 試行、日本関係者も注目 朝日新聞
http://www.asahi.com/special/080201/TKY200802270042.html
とのこと。
「陪審員の評決と、裁判官の判決がことなる事がある」ことを踏まえると
本作での判決がどれだけセンセーショナルなのか分かりますね。
どうやら実話らしい
映画がはじまる際に、「初の国民参与裁判を再構成した」と記載があった本作。
これ、どこまでが「事実」なんでしょうかね?
少し検索をしましたが、情報はつかめませんでした。残念。
エンドロールには、国民参与裁判が無罪を言い渡す確率は、通常の裁判の約3倍にものぼること。
そのことを踏まえ、韓国ではそれに適した法整備を進めているようです。
一般的な国民の「よく分かりません」的違和感が
人の人生を、良くも悪くも大きく変える可能性を描いた映画『8番目の男』。
第三者の感じるまっさらな、その小さなシグナルは、
誰かを救う希望になることを教えてくれた良作でした!
(しかし、ZEAのヒョンシクはかっこよろしい♥)←不届き者
⬇なぜ彼女は私を見て泣いたのか?「違和感」にグイグイ引き込まれるミステリー
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