思いもよらず、目撃してしまった殺人。
そのうえ犯人とばっちり目があってしまったら?
家族や自分の身を守るために黙秘をする男。
男が警察に協力をしなかったために、次々と不幸がおこり始めます。
だけど本当に怖いのは殺人犯だけなのでしょうか??
【あらすじ】
ソウル郊外に集合マンションの一室を購入したサンフン(イ・ソンミン)。
同僚らに祝ってもらった席の後帰宅する。
明かりを消した家のなかで一人晩酌の続きをしていると、外から物音が聞こえた。
窓から音のする方をみると、女性が黒ずくめの男に凶器で殴られているのを目撃。
警察に通報しようとした矢先、寝ていた妻・スジン(ジン・キョン)が起きだしリビングの明かりをつけてしまう。
その明かりが犯人の視界にとどき、サンフンの家を見上げる犯人(クヮク・シヤン)。
しかもサンフンは犯人と目が合ってしまい、犯行現場を目撃していたことが犯人にばれてしまう…
【数々の伏線・暗示】
①警察・マスコミに対して非協力協定書
殺人がおこったとわかるとすぐにマンション住人にお願いとして回っていた協定書。
マンションの価値」が下がるから、目撃証言などで協力をするなというお達しです。
ここではサンフンの「捜査への協力」と「家族や自分を守るための黙秘」が天秤にかけられえています。
ですが実は、後半への重要な伏線でもあります。
妻にサインするよう促されたサンフンが、
「裏山の山崩れ防止工事はなかなか動かないのに。大雨がきたらどうするだ」と一言。
この冷たい住民たちへの皮肉が、のちにじわじわと自分の身に襲いかかります。
そして新たな事実もあらわに!
韓国映画『目撃者』をAmazonビデオでみる②近所の少女が交通事故に巻き込まれ、失明寸前
殺人を目撃する前日に近所の奥様から、その娘さんにおこった事故の相談をされます。
娘は交通事故に巻き込まれたはずなのに、足ではなく目をやられてしまい失明寸前。
しかし警察は捜査を終了、示談をすすめられている訳ですが、家族は納得してません。
この交通事故に巻き込まれた娘さんの話、じつはこの後サンフン自身を表しています。
突然巻き込まれた不幸により、光を失いかけていると暗示しています。
③現場で同じように犯行を目撃していたネコ
残忍な犯行が行われている現場を目撃しているサンフンの映像の合間に
茂みに隠れたネコが写ります。
しかも犯行を目撃している…TT
これはサンフン以外にも、この犯行を見ている者がいることを示しています。
しかも植込みの中にいることから、表立ったところにはいない、
もしくは隠れているというこことですね。
いったい誰なんでしょうか?
④知り合いへの口座詐欺電話
実は先程の交通事故で失明寸前の女の子の話。
サンフンはちゃんと警察署につとめる知り合いに相談をしていました。
その際掛かってきたのが口座詐欺の電話だったんです。
電話を受けた知り合いはすでに詐欺だとわかっているのに、非常に丁寧な対応で断りをいれます。
それをみたサンフンは「なぜそんな対応を?」と投げかけます。
「暴言をはいたら、何をされるかわからない」と返答する知り合い。
サンフンは、はっとした表情になります。
復讐をおそれ当たり障りのない対応をする姿は、事件がおこったマンション住人たち、なによりサンフン自身を表しています。
【ネタバレ感想】
とてもうまい具合に、現代人の心の闇を描いた映画。
本当に描きたいのは殺人事件ではなく、突然やってきた悲劇に振り回される普通の人びとの「闇」です。
なのでソンミンが目撃した殺人事件は、多くの謎を残したままになっています。
殺人動機や、空白の2時間の行方も不明。
なによりも残虐な殺人犯に多く見られる、「幼少期の虐待」などといった要因もほぼない人物だったあたり、「悪人」=「普通じゃないはず」という公式も当てはまらないというブキミさ。
起こした事件は異常だけど、そんな犯人をつくってしまった環境は異常じゃなかった背景は、自分たちは普通だと思っている私達とあまり変わりません。
むしろ突然巻き込まれた不幸を、自分の利益のため放置した「普通の人びと」が怖い。
そして「普通の人びと」の日常は、また何事をなかったかのように戻ってゆくというわけですね。
111分という上映時間があっという間にすぎてゆく、韓国映画『目撃者』でした。
(なによりもピッピが…ぐすん)
↓日本リメイク版も公開されたばかり!